『Infinite Sweet Pain』
+Blindness+
Scene.4

 

 
 
 

鴨居零児
彼は九頭龍とは幼馴染で、
九頭龍に肉親のような感情を持っていた。兄のような、それでいて親友のような。
何時も頼りになりそれでいて自分のことを気にかけてくれている存在。そんな九頭龍に彼は絶対的な信頼を置き、プラトニックではあったが彼は九頭龍のことが好きで独占したいと思っていた。
それは甘えでもあり、彼に頼り依存しているということに自分では気がついていなかったのだが。
そんな九頭龍が最近親友として可愛がっている奴がいることに気が付いた。
それは巌瀬瑞穂という同じ部活の男だった。色々なことがあり自分は彼のことが嫌いだったが、それにもまして九頭龍が自分よりも巌瀬のことを構っているのにとても腹が立っていた。
自分の一番の親友に他の友達が出来、自分がおざなりにされている。彼には嫉妬の感情が沸き起こっていたのだ。
それは親友や兄弟が自分以外の友達を見つけた時や、新しい玩具を見つけて自分との遊び以外のことに耽っているのを見て、その友人との仲を裂いてやろうとか、玩具を壊してやろうと思う感情と似ていた。鴨居零児は巌瀬瑞穂を壊してやりたいと思っていた。

鴨居は日夜、巌瀬の壊し方を考えあぐねた。
「屈辱を味あわせながら二度と九頭龍の前に出れないような辱めを受けさせてやる!」
彼はそんな感情を抱きながら妄想を膨らませていた。
 

祭日の練習日、(活動日は月〜土の中で,部ごとに決定されており、日・祭日も練習や試合をする場合があった。)
早めに来てしまった瑞穂(巌瀬)はぶらりと教室に向かった。
部室の近くの北校舎の入り口から2年の教室のある本館へ行くには連絡通路を通る近道があり人気の無い北塔を彼は教室に向かい歩いていた。
北塔は昼間なのに薄暗く、祭日なので校内には人気がない。ひんやりとした廊下は古いコンクリートの校舎の独特の匂いがする。彼は人気の無い無人の校舎が嫌いでは無かった。
その暗がりに壁にもたれるようにしている人影がありよく見ると同じ部員の鴨居零児であることに気が付いた。その彼の前を通り過ぎた時に後ろから声を掛けられた。
「おい!巌瀬....先週、教室に鍵を掛けて九頭龍と何してたんだよ!」
瑞穂は背筋が凍った。それは...
--...先週...九頭龍と教室で情事をしていた...あの来事意外考えられない....--
あのことをほのめかしていたのだ。
彼は振り返ることが出来なかった。

鴨居にそのことを口外され自分が学校に居づらくなることもさることながら、九頭龍が巻き添えになって彼に迷惑を掛けることが一番辛かった。

この彼らの通うG高校(男子校)は暴力が支配している荒くれた学校で、強いものが正義であり趣味や趣向などへの偏見など殆ど生徒の間には無かった。現に数人そういう男色趣向の男が存在しているのだが、それらは強者であることもあり恐ろしくて誰もそれらのことを口にしなかった。その上に、ヘテロな男達も憂さを晴らすためや欲を満たすために日常茶飯事にマーキング行為のようなレイプ行為を行っていた。(まるで刑務所のように)
強いものがその強さを誇るために、そして敗者に屈辱を与えるためや男としてのプライドを傷付ける為にそれらは行われた。男達の欲望を満たすためのそれには、女のような貧弱な男がよく狙われる。一年坊主はかなり危険なので早めに理解のある男を見つけて舎弟になるか、部活なりなんらかの派閥に属する必要があった。
それらの貧弱な少年らは安全を買うために、強者との共生関係を築き強い者の庇護を受ける為に、体を提供していることもある。

瑞穂は真面目だったのでいらぬ心配をしていた。ヘテロ(ストレート)の間でも人気があり、強者であり猛者である九頭龍には私生活がどうのなどという、そんな心配は要らなかったのだ。

鴨居は瑞穂の肩を掴み強引に振り返らせた。
「『高雄のちんぽをケツに入れて下さい』だぁ〜〜〜!!」鴨居はものすごい形相で瑞穂の髪を掴み顔を引き寄せた。
「この変態野郎!!!!」
(プッ)
彼は瑞穂の顔にめがけて罵声と共に唾を吐きかけた。
瑞穂はあまりの侮辱に動揺していたが、激しい怒りに震えて戦慄いていた。自分だけの問題なら鴨居と喧嘩になっても構わないと思っていたのだが九頭龍のことを考えると、とても手が出せない。
鴨居の怒りや激情が髪を掴む手から伝わってくる。
「俺の幼馴染の九頭龍を変態にしやがって!!テメェがおかしなことを教え込んだんだろ!」
「お前のせいで九頭龍が不能になって女を抱けなねェ体になったらどうしてくれるんだ!!」鴨居は自分が何を言っているのか良く解らないほど頭に血が登っていた。

瑞穂は鴨居を激しく睨みつけながら抵抗していた。
「なんだぁ〜!その目はぁ!!」
「このアナル野郎ッ!!」鴨居の膝が腹を勢いよく蹴り上げ見事にみぞおちにヒットした。『ゴフッ』
瑞穂は息が止まるような感覚に襲われ気を失った。
 
 

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**モドル**