+刺青+ Scene.1
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G高校のラグビー部は、東京第二地区予選で代表にまで勝ち進んだが、本戦では惜しくも初戦で敗退してしまった。部の練習は暮れの12/28日まであったのだが、12月の暮れに入ってからというもの初戦敗退という喪失感が場を支配し彼等にあまり活気はなかった。 年明けには大学ラグビーの観戦をしに希望者を数名集めて、顧問の教師と見に行くことになっていたが、今日から年明けまでの数日間は皆(部員達)に会えなくなる。 巌瀬は今年最後の練習の後に教室に向って廊下を歩いていた。
九頭龍は教室の自分の席についていた。もう誰も居なくなっている年末の学校の窓辺の席。
巌瀬は斜め後ろから声をかけた。
「31日に俺の家に来いよ・・それから初詣に行こう巌瀬」 「バイトが終わったら行く・・10時頃・・。」 椅子に腰掛けた九頭龍の横に巌瀬は立っていた。学ランとシャツの、開いた襟元からは褐色の健康的な胸元が見える。九頭龍の視線の高さには肉付きのしっかりした細く引き締った腰がある・・制服に覆われた肉体。手を伸ばせ容易に触れることができ、そこにいる巌瀬自身を感じることができた。 教室には巌瀬の制服の布ずれの音があったが・・。
巌瀬が沈黙を破る。
九頭龍が不意に呼び止めた「巌瀬・・」 彼は振り向いたが、笑みを投げかけて出て行った。 ----------------------------------------------- 巌瀬は29日のバイトが終わると、年の瀬の底冷えのする物寂しい街の中を、バイクを走らせて住所録にあった九頭龍の家に向かった。 そこはセキュリティのしっかりした高層マンションだった。エントランスでインターホンを押して彼を呼び出してみたが、九頭龍は留守のようで出て来なかった。
そのコンビ二の前には水銀灯に集まる虫のように、数人の荒くれ達がたむろっていた。 巌瀬は髪を脱色していて、アッシュ系の茶色の髪にスカジャンを着ていたので多少目立っていた。 ------------------------------------------------ 九頭龍がバイクでコンビ二の前を通りかかると、男達に囲まれている巌瀬を見つけた。
「おい!何してんだ?!!こいつ俺の友達なんだけど・・変なことしてねーだろーな!!」 「九頭龍さんvv・・え?今??」
巌瀬は無邪気に微笑んで振り向いた。
知人達は血の気の多い奴ばかりなので気をもんだが・・誰よりも血の気が多かったのは九頭龍だった。
「家で着替えるから一回家に行こう・・」二人はマンションに向かった。 マンションのエントランスにつくと、九頭龍は手際よく入り口のロックを解いた。
二人はエレベーターに乗った。巌瀬は降り返り九頭龍の様子を窺った。彼は壁にもたれて腕組みをしながら扉の上の階数表示をみている。
エレベーターが開き、彼のマンションに通される。 そこは広いスタイリッシュなデザインマンションで、殺風景だったけれども、天井の高い奇麗な家だった。ここで家族と九頭龍が暮らしているのかと思うと巌瀬はドキリとしたが、この家には生活感が無く、そこがまた九頭龍らしいと思った。 「俺の親は単身赴任してて、何時もここには俺しかいないんだ。」 後に彼が父子家庭で父親は仕事で地方都市に住んでいるという話を聞いた。 巌瀬はリビングに通されソファに座った。
巌瀬は待っていた。テレビも付けていたがうわの空であまり見ていなかった。まだ年を越すには時間があり、九頭龍もバイクを持っていたので二人でバイクに乗って、
彼は着物を着ていた。 黒い羽織と袴を着て・・・脱色した髪と耳にはピアスをしたいたが、長身にその深い黒色の着物が似合い、思わず息を呑んだ巌瀬は惚れ惚れとその姿に魅入ってしまった。 「え??」
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